【撮影後記】Where We Call Home 立ち上がれ!飲食業界奮闘記

新型コロナウイルス。
人類史上、永遠に刻まれるであろう事実。疾病、死亡、失業、苦痛、一連の影は、またたくまに全世界を覆い暗澹たる風景を作り出した。
しかし、このような状況の中でも、人々は、諦めず、前向きに進んでいる。今回、私は日本に暮らす外国人を取り上げるドキュメンタリー番組「Where We Call Hone」の撮影に参加した。ここで、黙々と前に進む人々と出会うことが出来た。

 

中でも私にとって、一番印象深かったのは、同じ中国人女性のアヤさんだ。東京・池袋と埼玉・西川口に2つの中華店を持つオーナー。
最初に見たのが、私が入社する前にみた2月に撮影した映像だった。それからわずか4カ月、私が彼女を実際に見た時、大きく痩せていた。
コロナの影響で店の経営は悪化していた。特に重いのは、開店資金で借り入れたローンの返済、毎月40万円に達する。休業して政府から援助を受ければもっと楽にいられたろうけども、彼女は決してこの道を選んでいなかった。

 

 

“この店は開店してから7年目です。東京で初めてのマーラータンの店です。
こんなに多くの人が私に頑張って欲しいと言っているので、私は絶対に耐えます。”

 

撮影時に発した彼女の言葉・・・。
店にいる時、彼女は料理作り、会計、食材の発注などなど、全てをこなすほど、忙しく働いていた。オーナーとして店の核心的な魂でもある。特にこのような状況で、自分の店の品質を落とすことはできないのが、また大変なのだ。少しでも売り上げを上げようと、彼女はWeChatを通じて団体の注文を受け、自分で車を運転して配送することを始めた。注文の集計は前日の夜まで。アヤさんは午前13時に配送の約束をしていたため翌日の朝早く出勤し、2人のスタッフと一緒に食材の仕込みを始めた。3人は厨房で忙しく動き回ると同時に、合間に来店のお客さんにも対応した。出前の料理が出来上がると、アヤさんは慌てて車に積んで飛び出していった。

 

配達場所に到着すると、お客は約束の時間より30分も遅れてきた。しかし、アヤさんは文句を言わず待っていた。ここで一つミスがあった。お客さん一人一人の名前と注文内容を確認しなかったため、一人分の弁当が余ってしまった。しばらくすると、アヤさんに電話がかかってきて、余った弁当を抱えて走っていった。戻ってきた時は、両手が空いていた。

注文した人は見つかりましたか。と私。
違いますよ。とアヤさん。

あるお客さんがプラスチック製の弁当箱が破れていることを発見したので、プラスチックの破片が食べ物に混入するのを心配して、お詫びとしてその余分の弁当をお客さんに無料であげたのだった。

それはあなたの問題だとは言えないんじゃないの?と私は不満気味に言った。
すると彼女は笑いながら私の肩に手をかけて、“これは飲食業の最低限のサービスですよ。”

 

 

“外国でマンションと車を持って、二つの店を経営している三十代の独身女性”。
どう考えても羨ましいキャラだろう。撮影を通して、お金のにおいが充満している形容詞を追い払い、初めて彼女の本当の姿を見ることができたのだ。カメラに記録されている彼女の日常は忙しかった。同様に、カメラがオフになっていた時も、彼女は相変わらず忙しかった。様々な業務に連絡し、次に何をすべきか、明日に何をすべきか、誰に連絡すべきかを考えていた。
撮影の途中、彼女は 「ちょっと休ませて」 と言った。
静かに座って、自家製のマーラータンスープとご飯を混ぜて、ゆっくり食べた。

 

 

実は、アヤさんの池袋の店は、私も良く通っていた大好きな店。まさか、こんな出会いがあるとは・・・。お客としてでは見ることのできない裏側を私は目にすることが出来た。普段、私たちに“あの有名な店のオーナー”と呼ばれている人は、一般人と同じだね。
ただ一般人よりもっと頑張っているのだ。

中国ではよくある言葉だと、
“あなたより優れた人は、あなたよりもっと努力している。”

そう考えると、自分は今のままで良いのか。もっと努力をしないと社会でやっていけないのではないのか。不安や、心の弱さ、勇気の欠如、自分には何が足りないのだろうか・・・、いろんな思いが込み上げてきた。。

AD 江曼雪

<番組情報>

Where We Call Home/NHKワールド JAPAN
[Struggles for Recovery in the Restaurant]
初回放送 2020年7月6日

番組は、放送後NHK On-demandでご覧いただけるようになります。
※予告なく終了する可能性があります。

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